発注取引の用語集
受発注の現場で使われる言葉を、受託した側の立場から説明します。契約の型、支払いの決まり、案件が社内でどう通るか——取引を始める前に意味を取り違えたくない言葉を集めました。
契約と法令
何を約束したことになるのか、守られなかったときに何が使えるのかを決める言葉。
- 請負契約仕事の完成を約束し、完成した成果物の引渡しに対して代金が支払われる契約。完成しなければ原則として報酬は発生せず、成果物に不備があれば契約不適合責任を負う。
- 偽装請負契約の形式は請負や準委任なのに、実態としては発注企業が受託側の担当者に直接指揮命令をしている状態。労働者派遣法・職業安定法に違反しうる。
- 基本契約書継続的な取引に共通するルールをあらかじめ定めておく契約書。個々の案件は、この基本契約に基づく個別契約(注文書・注文請書など)で発注される。
- 業務委託契約自社の業務を外部の事業者に任せるときの契約の総称。民法上の類型としては請負契約か準委任契約のいずれかにあたり、どちらとして結んだかで責任の重さが変わる。
- 契約不適合責任引き渡した目的物が契約の内容に適合しない場合に、売主・請負人が負う責任。2020年の民法改正で、それまでの瑕疵担保責任に代わって導入された。
- 下請法(取適法)発注側の優越的な地位の乱用を防ぐ法律。2026年1月1日の改正施行により「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」から「中小受託取引適正化法(通称:取適法)」へ改称され、規制対象と禁止行為が広がった。
- 準委任契約一定の業務を遂行することを約束する契約。成果物の完成義務は負わず、善良な管理者の注意をもって業務にあたる義務(善管注意義務)を負う。
- 秘密保持契約(NDA)取引の過程で知った相手方の情報を、目的外に使わず第三者に開示しないことを約束する契約。提案や見積の前段階で結ばれることが多い。
- フリーランス法従業員を雇わずに個人で働く事業者への業務委託を対象に、取引条件の明示や報酬の支払期日などを発注事業者に義務づける法律。2024年11月1日施行。
発注と支払い
いつ発注が成立し、いつ代金が入るのかを決める言葉。
- 相見積もり同じ条件で複数の事業者から見積を取り、比較して発注先を決めること。価格の妥当性を確かめる手段である一方、当て馬として使われることもある。
- インボイス制度2023年10月1日に始まった消費税の仕入税額控除の方式。登録を受けた適格請求書発行事業者が交付する適格請求書(インボイス)の保存が、控除の要件になる。
- 買いたたき発注する物品や役務等に通常支払われる対価に比べて、著しく低い代金を不当に定めること。取適法の禁止事項の一つ。
- 検収納品された成果物が発注内容どおりかを発注側が確認し、受け入れを確定させる手続き。多くの契約で、検収の完了が代金支払いの起点になる。
- 支払サイト締め日から代金が実際に支払われるまでの期間。「月末締め翌月末払い」なら最長で約60日、「月末締め翌々月末払い」なら約90日になる。
- 支払遅延定めた支払期日までに代金が支払われないこと。取適法の対象取引では禁止事項の一つで、遅延した日数に応じて年率14.6%の遅延利息の支払い義務が生じる。
- 請求書提供した役務・物品の代金の支払いを求める書面。消費税の仕入税額控除を受けるためには、インボイス制度の要件を満たした適格請求書である必要がある。
- 注文請書発注書(注文書)を受けた側が、その内容で受注したことを示して交付する書面。発注書と対になって個別契約の成立を示す。
- 納品書納品する物品や成果物の内容を示して相手に交付する書面。検収の起点になり、受領日の証跡として支払期日の計算にも関わる。
- 発注書発注する側が、何を・いくつ・いくらで・いつまでにを示して相手に交付する書面。取適法(旧下請法)の対象取引では、発注内容を明示することが委託事業者の義務になっている。
- 見積書提供する内容と金額、前提条件、有効期限を示す書面。金額そのものより、何が含まれ何が含まれないかを確定させる文書として機能する。
案件の進め方
発注企業の中で案件がどう決まり、どう動くのかを表す言葉。
- RFP(提案依頼書)発注側が、実現したいことや前提条件・評価基準を示して、事業者に提案を求める文書。これに対して事業者が提案書と見積を出す。
- SOW(作業範囲記述書)どこからどこまでを、どんな体制で、いつまでに、何を成果物として行うのかを具体的に記述した文書。契約書に添付され、範囲の境界を定める。
- 決裁権限どの役職者が、いくらまでの支出や契約を単独で決められるかを定めた社内ルール。窓口の担当者にどこまで決められるかは、これで決まっている。
- 多重下請け構造発注企業から一次請け、二次請け、三次請けへと業務が再委託されて重なっていく取引構造。階層が下がるほど、単価は下がり情報は減る。
- ベンダーマネジメント発注企業が、委託先の選定・契約・評価・見直しを一連の仕組みとして運用すること。取引先を「選んで終わり」にせず、継続的に評価する考え方。
- 要件定義何を作るのか・何を満たせば完成なのかを、実装に入る前に文書として確定させる工程。ここでの決め方が、後工程の手戻りと費用のほとんどを決める。
- 与信管理取引相手が代金を支払えるかを事前に調べ、取引の限度額や条件を決めて管理すること。掛け取引では、納品してから入金までの間、代金は回収されていない。
- 稟議担当者が起案した案を、関係者と上位者が順に確認・承認していく社内手続き。日本企業で発注が正式に決まるまでの実質的な関門になることが多い。
言葉ではなく、相手を調べる
契約の型も支払いの決まりも、守られるかどうかは相手の企業によります。発注企業の成績表は、受託した側が発注企業の取引品質を9項目で記録するデータベースです。